PyStan3/Windowsへのショートパス

PyStan 3/Windowsへのショートパス

Stanについて、https://pystan.readthedocs.io/en/latest/index.htmlには次のように説明されている（2025.03.02）。

Stan® is a state-of-the-art platform for statistical modeling and high-performance statistical computation.

PyStanの上記サイトでの説明は以下のようである

PyStan is a Python interface to Stan, a package for Bayesian inference.

ただし、以下の制約がある（https://pystan.readthedocs.io/en/latest/upgrading.html；2025.03.02）。

The default, recommended HMC sampler is fully supported. Variational inference, maximization algorithms, and other sampling algorithms are not supported. Users who need these features should consider using different software (e.g., CmdStan, CmdStanPy, jax, PyTorch).

このことに関して、以下の説明がある（https://pystan.readthedocs.io/en/latest/upgrading.html）。

The scope of PyStan 3 is reduced in the interest of freeing up resources to dedicate to making the software more reliable and to guaranteeing timely releases. The default HMC sampler is supported. Variational inference, for example, is no longer supported.

PyStan 3用のStan入門の説明のサイトも用意した。

以下は、備忘録である（2025.03）。

PyStan 3をWindowsで使用するための準備を、１．UbuntuのWindowsへのインストール：２．MiniCondaのUbuntuへのインストール：３．PyStan３のインストールと試用：４．追加と削除の順に説明する。

１．UbuntuのWindowsへのインストール

PyStan 3はWindows 上では直接使うことはできないので、WindowsにUbuntuをインストールして、Ubuntu上で使用する。使用の感触は、Windows上でWindowsのアプリを使用することと同じである。

UbuntuをWSL(Windows Subsystem for Linux)を利用してインストールするために、スタートメニュの「Windows PowerShell」の項目をマウスの右ボンタンでクリックして、表示される項目から「管理者として実行する」を選びクリックする（図A1）。

図A1

タスクバーに下図のようなボタン（Windows10の場合）が表示される、

このボタン（アイコン）をクリックすると、「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか」というメッセージボックスが提示される。「はい」のボタンをクリックするとPowerShellの画面が表示される。

PowerShellの画面が開くと、図A2のようになる。

図A2

WSLをインストールするために、コマンド「wsl --install」を実行する。

Ubuntuのインストールが終わったら、コマンド「wsl.exe -d Ubuntu」を実行する。

User accountが表示される。Enterキーを押すと、passwordの設定が求められる。

パスワードを設定してEnterキーを押すと、確認のための再設定が求められる。

パスワードを設定すると、Ubuntuの準備作業が始まる。終了後、コマンド「exit」を入力すると、Ubuntuからのログアウトになる。さらに、コマンド「exit」を実行すると、PowerShellの終了となる。

ここで、一旦PCの再起動を行う。

再起動後、スタートメニュの「Ubuntu」を選んで起動する。

図A3

Ubuntuが起動すると図A4の端末画面が表示される。

図A4

まず、Ubuntuの更新を行うために、コマンド「sudo apt update && sudo apt upgrade」を実行する。

「sudo」の付いたコマンドなので、パスワードの入力が求められる。

パスワードを入力すると、更新が始まる。

更新作業が進むと、続けるかどうかという問い合わせが表示される（図A5）。

図A5

「Y」を入力すると、作業が進む。

更新が終了すると、コマンド「exit」を実行して、一旦、Ubuntuを終了する（図A6）。

図A6

次にUbuntuを起動したら、C＋＋コンパイラをインストールする。C＋＋コンパイラは、PyStan3の使用に必要である。

Ubuntuでは、C++コンパイラとして例えば「g++」があるが、コマンド「g++」を実行すると、まだインストールされていない場合は、インストール法が表示される（図A7）。

図A7

コマンド「sudo apt install g++」を実行すると、パスワードの入力が求められる。パスワードを入力すると、インストールが始まる。

インストールが終了したら、コマンド「exit」を実行して、一旦、Ubuntuを終了する（図A8）。

図A8

２．MiniCondaのインストール

WSLにインストールしたUbuntuにminicondaをインストールする。

Minicondaのインストールファイルをダウンロードするが、これはWindowsのブラウザーを利用すると簡単である。

MiniCondaはAnaCondaと同じサイトからダウンロードできる。

https://www.anaconda.com/download

上記のウェブサイトにおいて、E-mail addressを設定後、「Submit」ボタンをクリックする（図B1）。

図B1

Anacondaインストーラが、表示される。

図B2

Anacondaの下にminicondaが表示される（図B3）。Anacondaの方を使用するときは、Anacondaを選べばよい。

図B3

CPUに合わせたファイルをダウンロードする。図B3では、IntelのCPUに合わせたものを選択している。

クリックしてダウンロードする前に、ダウンロード先のフォルダを用意する。Windowsの場合、ユーザーが自由にアクセスできないフォルダがあるので、新たにフォルダを作成してダウンロードすると安心である。図B4では、C:ドライブに「ForMiniConda」というフォルダを作成している。

図B4

ダウンロードにおいて「名前を付けて保存」を選び、提示されたダイアログボックスにおいてフォルダを選択する（図B5）

図B5

「保存」を選ぶと、ダウンロードされる。

Ubuntuを起動する（図B6）。

図B6

コマンド「ls」は、現在のフォルダ内のファイルおよびフォルダを表示するものである。最初の「ls」コマンドで何も表示されないのは、何もない、空だからである。

コマンド「cd /mnt」でフォルダ「/mnt」に現在のフォルダ（ディレクトリ）が移動する。この/mntフォルダに、Windowsのハードディスクなどがある。

コマンド「ls」で、小文字のcとあるのが、WindowsのCドライブである。

コマンド「cd c」に続く「ls」では、Cドライブの一番上の階層にあるファイルとフォルダが表示されている。

コマンド「cd ForMiniConda」により、フォルダForMiniCOndaに移って、コマンド「ls」を実行する。ダウンロードしたファイルMiniconda3-latest-Linux-x86_64.shが表示されている。っこのファイルをコマンド「bash」で実行する。

インストール手続きが進むと、ライセンス内容が表示される（図B7）。

図B7

「--More--」で、Enterキーを押すと１行進む。スペースキーを押せば、１画面進む。

図B8

最後にライセンスを認めるかどうか聞かれる。「yes」と入力すれば、先に進む。

インストールするフォルダを聞いてくる（図B9）。

図B9

特に変える必要がなければ、Enterキーを押せばよい。

インストールの最後に図B10のようなことが聞かれる。

図B10

これは、「yes」と答えておいた方が使いやすいと思われる。

インストールが終了したら、コマンド「exit」を実行して、Ubuntuを終了する（図B11）。

図B11

Ubuntuを再起動する。コマンドラインの先頭が「（base）」で始まっている（図B12）。

図B12

これは、minicondaの仮想環境「base」であることを示している。Minicondaのコマンドを用いることもできるが、Ubuntuの普通のコマンドも有効である。

コマンド「conda update -n base conda」を実行して、更新を行う。

上の更新が終了すると、次にコマンド「conda update --all」による更新を行う（図B13）。

図B13

上の更新が終了したら、Ubuntuを終了する（図B14）。

図B14

３．PyStan 3のインストール

Minicondaの仮想環境にPyStan 3をインストールすると便利である。仮想環境にインストールしたソフトウェアは外部には影響しないので、それぞれの仮想環境に合わせた設定が独立にできる。ここでは、ライブラリArvizを用いない設定とArvizを利用する設定の２つの仮想環境を考える。また、WSLはそのままではグラフ描画などができないので、仮想環境ではＭＣＭＣサンプリングのみを行い、得られたＭＣＭＣサンプルの分析はWindows 上で実行されるPythonで行う。

ライブラリArvizを用いない場合

ライブラリArvizを用いないPythonの環境を構築する。

Ubuntuを起動して、図C１に示すコマンドをじっこうする。

図C1

パラメータ「-n」に続く文字列を名前とする仮想環境が作成される。Pythonのバージョンは「python=」の右側に指定する。上のコマンドを実行すると、Python 3.12の仮想環境がpy312の名前で作成される。

仮想環境が作成されると、図C2のような画面になる。

図C2

コマンド「conda activate p312」を実行して、アクティブな仮想環境をpy312にする。

コマンドラインの先頭が「(py312)」で始まり、アクティブな環境がpy312であることが示される（図Ｃ３）。

図C3

利用頻度の高いライブラリとして、numpy、pandas、scipy、openpyxlをとりあえずインストールするためにコマンド「conda install numpy pandas scipy openpyxl」を実行する。インストールしたライブラリは、インストールを実行した仮想環境内のみで有効である。インストールされたライブラリは、それぞれの仮想環境用のフォルダに格納される。

上記のインストールが終了したら、次にPyStan3のインストールを行う。

コマンド「pip install pystan」を実行する。pipコマンドであること、ライブラリ名がpystanであることに注意。

図Ｃ4

Pystanのインストールが完了したら、簡単なスクリプトを実行してみる。

図C5のスクリプトは、Windows用の標準Python開発環境のエディタで作成したものである。Python標準開発環境は

https://www.python.org/

からダウンロードできる。

図C5

PyStan３のライブラリ（モジュール）は、モジュール名stanでimportされていることに注意。

MCMCサンプリングの結果は、関数to_frame()によってPandasのDataFrame型に変換されたものがファイル‘fit.pkl’に格納される。

図Ｃ５のスクリプトを実行するために、仮想環境py312のカレントディレクトリをスクリプトファイルの置かれているC:\ForMiniCondに移す。

コマンド「cd /mnt/c/ForMiniConda」を実行する（図Ｃ６）。WindowsでのドライブC:が小文字で/mnt/c/と表されていることに注意。

図Ｃ６

コマンド「python sample.py」でsample.pyは実行され、最後に、MCMCサンプルのPandasのDataFrame型にまとめたものをファイルfit.pklに保存したことを端末に出力して終了している。なお、スクリプトをエディタなどで編集したときは、実行前にファイルに保存の手続きを行っておく必要がある。

次に、MCMCサンプルのファイルfit.pklを読み込んで、描画処理を行う。このスクリプトの実行は、Windows上で行う。

上のMCMCサンプリングのスクリプトと同じフォルダに描画スクリプトを用意する（図C7）。

図C7

図C7のスクリプトでは、MCMCサンプルのファイルfit.pklを読み込んで、パラメータpの事後分布のヒストグラムを描いている（図C8）。

図C8

ライブラリArvizを用いる場合

MCMCサンプリングの(Rhat)の値は、ライブラリArvizを用いて得ることができる。

図D1のスクリプトは、図C7のArvizによるRhatの算出スクリプトを加えたものである。

図D1

図D1のスクリプトを実行すると、エラーが出る。これは、モジュールnumpyとscipyのバージョンがArvizのバージョンに合わないからである（2025.03.02現在）。NumpyとscipyのバージョンをArvizと合うものに変えるために、コマンド「pip install numpy==1.26.4」とコマンド「conda install scipy=1.12」を実行する（図D2）。