多件法による上下法
岡本安晴
基礎心理学研究、2019、90−104
適応的心理物理学的測定法である標準的上下法では「より強い」と「より弱い」の２件法が用いられるが，本研究では「より強い」，「同じ／判らない」，「より弱い」の３件法，あるいは「より強い」，「多分より強い」，「多分より弱い」，「より弱い」の４件法を用いることを提案する．シミュレーション実験により，提案した方法は標準的な上下法より優れていることが示された．比較は，二乗平均平方根誤差RMSEによってなされた．まず，２件法において標準の算術平均による推定値より，確率モデルに基づく推定値の方が，極端な条件の１例を除いてRMSEが小さいことが示された．これにより，２件法と３件法および４件法との比較は確率モデルに基づく推定値で行われた．３件法あるいは４件法による主観的等価点の推定値のRMSEは，２件法によるものより小さかった．モデルの傾きパラメータ，このパラメータ値のある比率として弁別閾が算出される，の３件法あるいは４件法による推定値のRMSEは，極端な条件の２例を除いて，２件法より小さかった．
本文へのリンク：https://doi.org/10.14947/psychono.38.2